2015年4月18日(土)ひなた村カリヨンホールにて、小2以上の4月例会を行いました。 劇団なんじゃもんじゃによる『ベッカンコおに』です。
なんじゃもんじゃは、西尾瞬三さんと西尾夏子さんのご夫婦2人で1993年に岐阜県福岡町で旗揚げされ、今年で23周年目を迎える劇団。町田とは、2008年1月例会「きずだらけのリンゴ」以来の再会です。
響きのおもしろい「なんじゃもんじゃ」という名前の由来は、地元に自生する樹齢200年近い「ナンジャモンジャの木」のからとのこと(写真に映っているパネルの木)。
ちなみに、ナンジャモンジャとは、見慣れない立派な植物、怪木や珍木に対して地元の人々が付ける愛称で、特定の植物の種名ではありませんが、ヒトツバタゴを指すことが多いようです。毎年5月頃、雪のような白い花を咲かせるそうですよ。
さて、舞台の内容は……
滑稽なベッカンコ顔だからと笑いものにされる心優しい鬼と盲目ゆえに村の子どもたちからいじめられる里の娘ユキ、そしてユキの父親。三者三様の愛の形がいつしか鬼に変わっていく悲劇を描いています。
周りから差別され続けていた孤独な者同士のベッカンコおにとユキ、2人が出会いやがて愛し合います。 しかし娘が鬼にさらわれたとユキを一生懸命探すお父は、ユキの目を治す竜眼草を採ってきたベッカンコおにを敵だと思い、鉄砲で撃ち殺してしまいます。 ラスト、目が見えるようになったユキは、自分の腕の中で息を引き取るベッカンコおにを看取ると、人間への憎しみから、鬼に変身してしまいます。
“鬼って一体どこにいる 人の中に鬼はいる 人も鬼になれる あなたは人か鬼か わたしは人か鬼か 鬼っていったいどこにいる”
誰も悪くないのに……やるせない切ない思いが残る、とても考えさせられる内容でした。
たったふたりで、おにの面とゆきの人形(乙女文楽でしたね)を使い分けながら 、お父、山カカ様、せみ(笑)、コロス(※)etc……何役もやっていて、それでいてせわしなさや違和感を感じさせないのが見事でしたね!狂言を取り入れたようなゆったりした動きや、しの笛の音色、能舞台を思わせるような素朴な舞台空間、現代劇でありながら、日本の伝統芸能の様式美を感じました。子どもは、ユキが恐ろしい鬼の面をつけ白装束で舞うところが怖かったそうです。
※コロス(koros)とは、古代ギリシャ劇に出てくる合唱隊のこと。コロスは、観客の観賞の助けとなるよう、劇の背景を要約したり、主要登場人物が劇中語れなかったこと(たとえば恐怖、秘密とか)を登場人物に代わって代弁したりなど、劇を進行する役割を持ちます。
終わった後は、西尾夏子さんが舞台や劇に関する素朴な疑問や質問に ひとつひとつ丁寧に答えてくれました。どのような質問が出たかというと……
質問1:「風鈴はどうやって鳴らしてたのですか?」 質問2:「最後、舞台の背景が赤くなったのはどうしてですか?」 質問3:「どうしてゆきは生身の人間でなく人形で演じることにしたのですか?」 質問4:「人形はどうやって動かしているのですか?」
この答えは……、サークル会で観た方に聞いてみてくださいね(笑)。
最後に、舞台でも話がありましたが、原作本の紹介を。さねとうあきら・作 井上洋介・絵(理論社)。2006年に復刻されたようです。
「ベッカンコおに」の他にも「ゆきんこ十二郎」「おにひめさま」の、合わせて3つの物語が収められています。3編とも人間の娘が異界のものと出会う話です。